生成AIを使えば、いまでは比較的簡単なツールなら作れるようになりました。 弊所でも、実際に生成AIを活用して特許実務用のツールを開発しています。 しかし、自分で作り、実案件で繰り返し使ってみて、初めて分かったことがあります。 「動くものを作ること」と「毎日の特許実務で安心して使えるものに仕上げること」の間には、 想像していた以上に大きな壁がありました。
条件、チェック項目、出力形式などを細かく書き込み、8,000トークン近くまで使った 長いプロンプトを作ったこともあります。かなり作り込んだつもりでした。 ところが実案件で繰り返し使うと、ある項目が抜ける、前回できた確認を今回はしない、 出力の詳しさが変わる、一見もっともらしいのに根拠がおかしい――そんなことが起こりました。 私自身、実際に作って、失敗して、直してみるまで、この違いを十分には理解していませんでした。
生成AIは非常に優秀ですが、決められた工程を毎回まったく同じように、 すべて漏れなく実行する機械ではありません。長い資料や多数の確認項目では、 処理漏れやばらつきが生じることがあります。
チェック項目を細かく分け、各工程を順番に実行し、未処理項目をプログラムで検出する。 単純な検査はプログラムに任せ、難しい判断には高性能なAIを使います。 さらに、タスクごとにAIの種類や思考の深さ(Thinking level)を選ぶことも重要です。 すべての工程で最上位のAIや高い思考設定を使うと、処理時間や利用コストが大きく増えることがあります。 品質・速度・コストのバランスを見ながら、適切に使い分けます。
AIが答えを出しただけで終わりにはできません。 必要な項目がすべて処理されたか、矛盾や根拠不足がないか、 重要な見落としがないかを、プログラムや別のAI、必要に応じて実務家が 最終的に検証・レビューする工程が不可欠です。
未公開発明や顧客の機密情報を扱う以上、「有料AIだから安全」だけでは足りません。 学習利用、データ保持、アクセス制御、暗号化、保存・処理場所、越境移転、契約条件など、 情報がどこで、どの条件で扱われるかまで考える必要があります。
弊所では、日常の特許実務の中で時間を取られている確認、比較、整理、翻訳チェックなどを見つけ、 まず自分たちの業務を改善するためのツールとして設計します。 「AIに全部任せる」のではなく、実務工程を分解し、AIとプログラムを役割分担させ、 最終検証まで含めて一つの仕組みにします。 目的はツールを作ることそのものではありません。 定型・反復作業に使っていた時間を減らし、弁理士が発明理解、権利化方針、 クレーム検討、応答戦略などの高度な判断・検討に、より多くの時間を使えるようにすることです。
日常業務の中で時間を取られている作業を見つけ、 まず弊所自身が使うツールとして設計します。
実案件で使い、漏れ、誤り、使いにくさを見つけて修正します。 「動いた」で終わらず、安定して繰り返し使えるところまで検証します。
AIの出力をそのまま成果物にはせず、処理漏れ、矛盾、根拠不足、 重要な見落としがないかを確認する最終レビュー工程まで設計します。
もう一つ、ツールを作り込む中で分かったことがあります。 一人の弁理士、一つの事務所の経験だけでは、幅広い特許実務に本当に使えるツールは完成しません。 特許は、機械、電気・制御、IT、化学、材料、バイオなど技術分野が広く、 分野が違えば、発明の捉え方、明細書やクレームの確認ポイント、翻訳上の注意点、 拒絶理由への着眼点も変わります。 だからこそ、異なる分野・経験を持つ弁理士や実務家の知恵が必要だと考えています。
完成したツールを一方的に売るのではなく、実案件から得られる率直な評価をもとに、 「ここは使える」「ここはまだ弱い」「このチェックもあった方がよい」といった声を取り入れ、 少しずつ実務に強いツールへ育てていきたいと考えています。 目指すのは、AIツールを増やすことではなく、 定型作業を減らし、弁理士がより高度な判断や検討に専念できる実務環境です。
多くの事務所に共通して役立つご意見は、共通機能として反映します。 一方、事務所独自のチェック基準、用語ルール、Word形式、レポート形式、 独自ワークフローなどは、必要に応じて個別のカスタマイズとして対応します。
弊所のもう一つの柱は、長年の日米特許実務経験を生かした米国関連業務の支援です。 特許翻訳、米国オフィスアクション、現地代理人との連携など、 日本の特許事務所が米国案件を進める際の実務を支援します。 こうした日米の実務経験は、AIツールを設計する際の着眼点にもつながっています。
発明者へのインタビュー内容を整理し、技術的特徴、従来技術との差異、効果、実施形態等を 出願準備に使いやすい形へまとめるツールを検討しています。 発明者との面談後の整理作業を軽減し、弁理士が発明の本質把握に集中できることを目指します。
発明資料の整理、関連資料の確認、クレーム案の検討補助など、 出願準備のうち定型化しやすい作業を支援するツールを想定しています。 最終的な権利化方針やクレーム判断は弁理士が行う前提です。
明細書、特許請求の範囲、要約書、図面間の不一致や、用語・符号・記載の不整合を 機械的・網羅的に確認するツールを開発しています。 人が見落としやすい形式的な確認を減らし、内容面の最終確認に時間を振り向けられるようにします。
AIによる翻訳の叩き台作成や、訳抜け、誤訳候補、用語不統一等の自動チェックを行うツールを開発しています。 あわせて、日米の特許実務経験を生かし、外国出願用明細書の英訳や翻訳内容の検討など、 実務面からの支援にも対応します。
拒絶理由、対象クレーム、引用箇所、審査官の論理等を一次整理するAIツールを開発しています。 そのうえで、米国オフィスアクションについて、相違点、補正の方向、応答方針等の検討を支援し、 必要に応じて米国現地代理人との連携をサポートします。
米国での長年の特許実務経験を生かし、日本の特許事務所が米国案件を進める際の実務を支援します。 米国現地代理人とのやり取り、案件内容の整理、応答方針の検討補助など、 日本側と米国側の間をつなぐ役割を重視しています。
未公開発明や研究開発情報を扱う知財業務では、 精度や使いやすさだけでなく、セキュリティまで含めて設計して初めて実務利用を検討できます。 「有料AIだから安全」「学習に使われないから問題ない」だけでは十分とは限りません。 学習利用、データ保持、アクセス制御、暗号化、保存・処理場所、越境移転、契約条件など、 どの情報が、どこで、どの条件で扱われるのかまで確認する必要があります。 こうした点まで含めると、試作品を作ることと、知財案件で安心して使えるツールを作ることの間にある壁は、 さらに大きくなります。
Kurose & Associatesは、米国ワシントンD.C.近郊を拠点とする日本国弁理士事務所です。 日本の中小規模の特許事務所・弁理士を主な対象として、 特許AIツールの設計・開発と、日米の長年の特許実務経験を生かした米国関連業務の支援を行っています。 AIツール開発について、弊所も最初からすべてを分かっていたわけではありません。 自らの実務のために作り、実案件で使い、うまくいかなかった点を修正することを繰り返す中で、 「作れる」と「実務で使える」の間に大きな壁があることを実感してきました。 だからこそ、その作り込みは弊所が担い、異なる技術分野・実務経験を持つ弁理士の皆様の知恵を借りながら、 より実務に強いツールへ育てていきたいと考えています。 米国関連業務については、特許翻訳、米国オフィスアクション、現地代理人との連携など、 日本側と米国側の間をつなぐ立場から支援します。
AIツールによる成果物提供、共同開発へのご関心、事務所独自のカスタマイズ、 特許翻訳、米国オフィスアクション、現地代理人との連携など、 日本の特許事務所の実務に関するご相談をお寄せください。